パンづくりを志したきっかけは、
あるシェフとの出会いとフランスでの光景
私が「おいしいパンをつくりたい!」と思うようになった原点には、大学時代にアルバイトをしていたフランス料理店のオーナーシェフの存在があります。
そのオーナーシェフからは、フランスの料理や菓子、文化についてさまざまなことを教えてもらいました。
私はどんどんフランスに興味が湧き、実際に自分の目で見てみたいと思うようになり、あるとき友達とフランスに旅行したんです。
そこで印象深く映ったのが、街のパン屋さん。
毎朝、大勢の地元の人がパンを買いにきている光景を見て、「日常の暮らしに関わる仕事って素敵だな」と強く感じました。
もともと、ものづくりが好きだったこともあってパン職人を志すようになり、神戸屋へ入社しました。
上司、先輩の姿を見て
自然と目指すようになった世界大会
神戸屋では、さまざまな部署で経験を積んできました。入社後は、神戸屋レストランのホールスタッフとして勤務したのち、セントラルキッチンでパンづくりや新商品の開発に携わりました。その後は、スーパーやコンビニで販売している包装パン、神戸屋の直営店のパンの商品開発などを経て、現在は新業態の商品開発に携わっています。
「ベーカリー・ワールドカップ2020(クープ・デュ・モンド)」のヴィエノワズリー部門で準優勝できたのも、神戸屋でのさまざまな経験と習得した技術、そしてたくさんの方のサポートのおかげだと思います。
私自身が「ベーカリー・ワールドカップ」を意識するようになったのは、10年くらい前。日本が初めて「ベーカリー・ワールドカップ」に参加した際に日本代表メンバーだった河上 洋一さん、「ベーカリー・ワールドカップ2012」で優勝した長田 有起さんと出会ったことが大きいですね。
長田さんが優勝した大会へは、私も応援で同行したのですが、初めて大会の迫力や緊張感を目の当たりにし、圧倒されました。だから日本が優勝したときは、心から感動し、自分も挑戦してみたいと思うようになったんです。
見事、準優勝を果たしました!
こだわったのは見た目だけでなく、
食べてもおいしいパン
私が受賞した作品の中でも、特に思い入れがあるのが「紅葉」。国内選考の時から出していて、見た目や作り方を少しずつ進化させながらつくり上げた作品です。日本の四季を感じる美しい光景のひとつ、秋の紅葉を赤・オレンジ・緑の色合いで表現し、素材には抹茶と柚子を使用しました。抹茶も柚子も、海外ではメジャーになりつつある食材。ホワイトチョコを合わせることで、海外の方により親しんでもらえるように、と考えました。
「ベーカリー・ワールドカップ2020(クープ・デュ・モンド)」では、オリジナリティと味わいを特に高く評価いただきましたが、私自身は、味わいを評価されたことが特にうれしかったです。パンは食べ物なので、食べておいしいことを自分の中で絶対条件としていたんです。そこをきちんと評価してもらえたことは、自信にもなりました。今後は、若い社員がこういった大会にチャレンジしていけるようにサポートしたいですね。
「パンの魅力をもっと伝えたい」
この想いを原動力に
同じ材料、同じ製法でも、毎回同じパンが完成するとは限らないのがパンづくりの難しさであり、面白さ。だから昨日よりも今日、今日よりも明日と、よりおいしいパンを追求していきたい。それに、パンを食べたお客様から「おいしい!」という言葉を聞けたときは、大変だったことがすべて吹き飛ぶんですよね。パンづくりは、とてもやりがいのある仕事だと感じています。
本格的でありながら、日本のお客様の口に合うように工夫を凝らしているのが神戸屋のパン。もっとみなさんに神戸屋のパンの魅力をお伝えしていきたいですし、パンに興味を持っていただけたらうれしく思います。そんな想いを原動力に、これからもパンづくりを追求していきたいです。